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特集 The Net――IT革命の未来

第5部 新たな事業モデルを求めて
(1)トヨタ(上)「個客」狙い注文生産

 トヨタ自動車の元町工場(豊田市)の組み立てラインを流れる小型ワゴン「ガイア」で、ある実験が進んでいる。他の車種は大半が見込み生産だが、ガイアだけはすべて注文生産車。顧客から受注して初めて組み立てに取り掛かる。

 色や駆動方式選び工場発注


 受注したディーラー(販売店)は、「ホワイトパール」や「シルバーメタリック」など7種類のボディーカラー、二輪か四輪かの駆動方式、ガソリンかディーゼルかのエンジンの種類など、顧客の要望をパソコンに打ち込み、工場に送る。ムーンルーフやバックモニターなどオプション仕様も注文に入れる。

 年約170万台のトヨタの国内販売のうち、注文生産車は3割強。注文生産は顧客の細かな要求にこたえる仕組みだが、メーカーやディーラーから見れば完成車在庫が発生しない。「受注生産の確立に向けた試み」(トヨタ役員)だ。

 ガイアを選んだのは生産台数が年3万6000台と手ごろで型式やグレードも比較的少ないため。混流組み立てラインの元町工場ならば注文の繁閑があっても平準化しやすい。

 1台あたりの部品点数は約2万点にも及ぶ。ガイアの実験は組み立て工程の一部に過ぎない。それでも顧客の注文にこたえるには部品メーカーも日々変動する部品納入を平準化しなくてはならない。近隣に系列部品メーカーが集中立地するトヨタゆえに仕掛けやすい実験だが、完全な受注生産と「ジャスト・イン・タイム」の部品納入の両立には、部品の調達精度を飛躍的に高める必要がある。ガイアで試みる「個客志向」はITを駆使したサプライチェーンの再構築なしには実現できない。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)が建設中の新工場に、ネット上で顧客が色や装備を指定する注文システムを導入するなど、ライバルは新たな生産モデルを構築する。狙いは受注から納車までの期間を大幅短縮し、顧客満足度(CS)を高めることとコスト削減。

 「ジャスト・イン・タイム」や「カンバン」など、生産システムのデファクトスタンダード(事実上の国際標準)を生み出したトヨタだが、現状に安住する余裕はない。情報通信分野を管掌する三吉暹専務は今月14日、現在約20日間の納期を「何とか10日間にしたい」と名古屋市内の大学での講演で表明した。

 デルモデル参考の1つ


 トヨタはその端緒の一つを「デルモデル」に見る。昨年、米デルコンピュータの本拠地、オースティンを訪れたトヨタ幹部は「リードタイムの短さはやはり武器」との思いを改めてかみしめた。完全受注生産とネット販売のビジネスモデルはパソコンとの商品特性の違いを割り引いても、新鮮に映ったという。

 どこまでIT技術を取り込むか。

 「現場はヒト、機械、モノ、情報で成り立つ。情報だけが進歩してもだめ。ITの進歩に合わせたモノづくりの再構築が不可欠」

 張富士夫社長が言う通り、「e―カンバン」と呼ぶ電子カンバンの導入にもその姿勢が反映。「変えるべき仕組み」と「不変の仕組み」を峻別(しゅんべつ)する。

 トヨタの主要車両組み立て6工場は年内に大半の部品メーカーへの発注を電子化する。電子カンバンでは部品の型番や納期、納入場所など、紙カンバンの情報をデジタル化、暗号をかけた上で部品メーカーにオンラインで送る。従来トヨタの工場に納品したトラックが紙カンバンを部品メーカーに持ち帰り、そのカンバンが次の生産指示になる。電子化で発注指示にかかる時間がほぼゼロになる。

 最大の部品供給元デンソーはさらに、自社への納入メーカー約1300社とネットによる受発注システムを2001年10月までに導入する計画。電子カンバンで生産指示を受けると必要な部品を自動的に発注する。経費削減額は少なくとも年間2億―3億円にのぼり、一次供給元から二次、三次供給元へと連なる「部品調達ピラミッド」のリードタイムを短縮する。

 だが工場のラインでは紙のカンバンは続ける。カンバンが指示するものしか作らず、カンバンの滞留でラインの遅れがひと目でわかる。「異常がすぐに顕在化しないようでは、生産現場は決してよくならない」(トヨタの林南8.生産調査部長)。ガイアでも前工程に戻すロスが出ないよう作業精度をさらに高めた。

 一方、「トヨタ生産方式」の良さを捨てずに“いいとこ取り”ができれば、IT導入を加速する。

 「ニンベン付き自働化」目指す


 新型車をコンピューターの3次元空間で組み立て、試作する「V―Comm(ビジュアル・アンド・バーチャル・コミュニケーション)」は時間と費用がかかる現実の試作車をなくす。部品の相互干渉や仕上がりの美観チェックだけではない。仮想空間に登場した組み立て作業員の手がぶつからないか、姿勢に無理はないかなど、作業員あっての効率化というトヨタの「ニンベンの付いた自働化」哲学も盛り込んだ。

 主要グループ企業を結ぶこのシステムの登場で、数年前まで3年以上かかった新車の開発期間は、平均約18カ月まで短縮。試作車レスの第1号の新コンセプトカー「bB」では13カ月を実現した。

 トヨタにとってITは完成したかにみえた生産システムを組み立て直す格好の道具。「トヨタ生産方式は無駄を徹底的に省き、原価低減も行くところまできたという人もいるが…」。奥田碩会長は前置きしながら言い切る。「まだまだコストは下がる」(名古屋支社 美濃地秀起)



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